第2章 その14

「余計な事って?」

「お前はファインプレーをしてたってことよ」

さっき電話で聞いた話をする。

「知り合いにアンドロイドのショップをやってる爺さんがいてよ、教えてくれたんだよ。例のウィルスばらまかれた時間、そこのアリアちゃんは眠ってたのよ」

「眠ってたって…まさか!」

「そう、ちょうどおめぇが基盤抜き出してネットワークから切り離したのよ。だからそいつはウィルスに感染してねぇ、オーバーホールの必要なしってわけ!!」

「なんだよ…それ。」

拍子抜けな顔をして志乃はシートに倒れこんだ。

「このまま工場行くぞ」

「え!?感染してないならこのままでいいんじゃないの?」

「世間的にはもう危ないものって認識になっちまってるだろ?どっちにしろメーカーから正式に大丈夫って証明してもらわねぇと。だからな、この後工場行って。お前ちゃんと話せ」

こっからが大事なとこだ。

「もしかしたらメーカーに渡すだけだとちゃんと調べずにオーバーホールされちまうかもしれねぇ。だからお前がやったことも含めて全部話せ。もしかしたらお前の経歴に傷が付くかもしれねぇけど、ちゃんとそれも受け入れろ、大事なもん守りたいならな」

「そういうことね」

そう返事した志乃はもう覚悟はできてるみたいだった、全く大したガキだと思うよ。

 

「けど、なんでおじさんはこんな車運転してんの?」

「あぁ?これな。あの、後ろに閉じ込めたやつから話聞いてよ。この回収騒ぎに便乗して横取りしたやつを闇に流すつもりだったらしくて、そいつをさ、どうにかお前のやつだけどうにかできればどうにかなるかと思って、運転手やってたってわけよ」

「それって…完全に見切り発車じゃん!絶対どうにもできなかったよね!」

こいつが笑ってるの初めて見た気がする。バカにはされてるけど、たしかにその通り過ぎるからしょうがねぇな。

「でもよ、途中でさっきの電話があってよ、大丈夫じゃんってなったのよ。あとはお前らごと連れていければ解決だろ?」

「それであの電話?『今、家に来てる奴はニセモノだ。なんとか荷台に押し込んで来い』なんて指示ざっくりしすぎだろ」

「頭のいいお坊ちゃんはさすがだったよ」

俺たちはゲラゲラと笑いながら話して、車は工場に近づいて行った。

 

工場の入り口には警察車両が3台くらい止まっていた。あらかじめ俺が呼んでおいたやつだ。警察の誘導で車を止める。

「お前が柴田喜助だな?」

頷いたと同時に引っ張りだされ手錠をかけられる。

「おい!何してんだよ!そいつはちげぇよ!」

隣に座っていた志乃が慌てる。

「ちがくねぇよ、俺も共犯だからな。あと誘拐の容疑もかけられてるんじゃねぇかな?それに関しては違うってちゃんと証言してくれよ。」

志乃は別の警察が保護してくれてる。まぁなかなか憐れんだ顔してくれてるな。

俺の方も警察車両に連れていかれる。最後に一声かけとかねぇとな。

「おい!志乃!ちゃんと話せよ!話はそっからだぞ!」

まぁ、あいつなら大丈夫だろ。

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