第2章 その15

「もう話すこともないかと思ってたよ」

「これだけ早く出てこられたんだから感謝してよ」

いつもの場所で俺は柴田さんと話をしている。

「感謝すんのは志乃の親父さんにだろ」

「でも話をしたのは俺だからね」

あの夜、俺は自分のしたことを話してアリアは検査ののち正常と判断された。もちろん分解については怒られたけど今回は条件を飲んだことで何とかなった。

柴田さんが捕まったことに対しても父さんに事情を話して保釈金を出してもらった。誘拐疑惑についてももちろん釈明してあげてる。

「その後、親父さんとは良好なのか?」

「別に。そんな簡単に親子関係なんて改善されないよ」

「まぁ、そうだよな。そんな簡単じゃねぇよな」

「それで、柴田さんはこれからどうすんの?」

「そーさね。相変わらず金もねぇし、どうするもねぇけど。相変わらずブラブラして時間でも潰すかね」

「柴田さんてさ、お金欲しいの?欲しくないの?」

「今回、稼げそうな話何回か貰ったけどよ。結局今したい事も欲しいもんも思いつかなかったからホントはいらねぇのかもしれねぇな」

ヘラヘラと柴田さんは話す。

「なんかしたい事は探したいとは思うけどな」

「また暇してたらここにいてよ。まぁ俺の方は結構忙しいからあんまり相手してあげられないかもだけど」

立ち上がり伸びをする。

「なんだ、予定でもあんのかよ」

「あのメーカーから顔出せって言われてるんだよね。『独学で危ないことしないように正しい技術の使い方を教えてやる』って」

「それで一流から教えてもらえるんならVIP待遇じゃねぇか、さすが天才君は違うね」

「まぁね。ちょっくら技術盗んでくるわ」

 

アンドロイドのことを知りたいと思った、ここまで人間に近づいたアンドロイドは、じゃあどこが違うんだろう。先生に聞いても親に聞いても、大人に聞いても納得のいく答えが返ってこないなら、もう自分で探した方が早いだろう。

歌を歌ってるあの娘は人間なんだろうか、あそこで買い物をしているのはアンドロイドだろうか。

形は同じでも中身は違う、分かってるところから調べていけば納得できる答えが見つかるかもしれない。

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