第2章 その13

「やぁ、柴田さん久しぶり。今日は1人かい?」

タカミと話すのは久しぶりな気がする。このところ志乃と話してばかりだった。

「この前の取引の件、考えてくれたかな?」

「あぁ、あれな。持ち主に返しちまった」

「ほぇー、なんでそんな事。そんな義理ないでしょうに、柴田さんってそんなに善人だったとは知らなかったよ」

「悪かったな。だからあれは売れない」

「そうかぁ、じゃあそんな善人の柴田さんにはもっといい儲け話をしてあげよう。柴田さんはたしか運転免許もってたよね?」

 

電話を切ったところで家のチャイムが鳴る。

「夜分に失礼いたします。私、この度の暴走事故に関連する個体を回収するようメーカー様より委託されました者でござしまして。大変恐縮ではありますが引き渡しの方をよろしくお願いいたします」

俺はアリアを連れて家を出る、家の前にはそこそこ大きいトラックが止まってる。

運転席に目をやるとそこにはおっさんがいた。

「大変な事態になりまして申し訳ございません。急を要しますので荷台の方にお願いいたします」

品のない笑顔を張り付かせて男が話しかけてくる。半ば強引にトラックの後ろの方に促されて男は扉を開ける。

中には頑丈なロッカーみたいなのが並んでいてそれぞれにアンドロイドがいるんだろうか。

男はそのロッカーの扉を開く。

「それではこの中に入るようにご指示をお願いします」

アリアが近づいたところを見計らって、

「アリア!」

俺は叫んだ。その声に合わせてアリアは素早く動く。まったく様になってない促すために差し出してる右手を掴み手前に強く引く。バランスを崩したところで大きく踏み込み荷台の奥の方に振り回すようにぶん投げる。その反動を利用するようにアリアは荷台から飛び出し、スタンバイしていた俺とおっさんは勢いよく扉を閉める。

「よし!助手席乗れ!」

 

「こんな事してホントに何とかなるの?」

興奮と不安で、あと緊張もあったかもしれない。ちょっと動いただけなのにびっくりするくらい息が上がってる。

「何とかなる!お前が余計なことしてくれたおかげでな!」

おっさんは笑いながら言った。

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