第2章 その5

「アンドロイドの部品てのはさ、そうそう出回ってるもんじゃないんだよ。動いてる間はイジる事ないし、破棄する時は業者が引き取るだろ?そもそも素人が簡単に取り外せるもんじゃないし、そんな事出来ちゃメーカーのもんを勝手にカスタマイズできちまう。で、人間やるなと言われたもんはやりたくなる、興味を持つ奴は絶対出てくる。そこでお役に立つのが俺たちみたいな業者だよ」

誇らしげにニヤつく語りを聞いて大体察しがついた。前にこいつが話していた仕事ってのがこの事なんだろう、違法にパーツを売却する卸業者ってもんか。

「で俺のもってるそれは高く売れるのかよ」

「どこの部品かによるけどな、そのメーカーのもんは滅多に出回らない。購入するのに審査が厳しいし、つまり分解やらを企むバカが手に入れにくい。分解するのも特別ややこしいって話だからな。需要は低いが欲しがるやつはめちゃくちゃ欲しがるんじゃないか?」

「あんなもんがなぁ…」

「あんたも金がありゃしたいこともあるだろう?俺が買い取ってやるよ、今度持ってきな」

「それ貴重なもんだって言わずに安値で引き取った方が儲けられるんじゃないのか?」

「もう違法だって知っちまっただろ?これで売っ払ったらあんたも共犯だ、下手に警察に頼れなくなる。後のことも考えなきゃこう言う商売は続けられないのよ」

あれが高値で売れるとして、何かを始める軍資金があるとして、じゃあ俺は何をする?

このただ生きてるだけの生活は確かに何の面白みもない。今までは何をするにもとっかかりがないし、どうせ無駄だって動く気すら起きなかった、けど今回で金を手にできるならまた何かに頑張れるかもしれねぇ。具体的なのはまだ思い浮かばないが、とりあえず金を作るのは大事かもしれねぇ。

ぼんやり考えながら家に着いた時、誰かに見られてる気がした。あたりを見回してみたが物陰に誰かが潜んでると思えばそう見えるし気のせいと思えばそれで納得できた、だからそのまま家に入った。

 

翌日、やる事は相変わらずないが考えることができた俺は、相変わらずいつもの場所に来て普段考えない将来のことを考えてると見知らぬガキが声をかけてきた。

「あの、あれ、返してください。」

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