第2章 その11

夕方の志乃はひでぇ顔をしてた。

そりゃ気が気じゃねぇよな、アンドロイドと暮らしたことなんかねぇけど家族となんら変わらんってのなら辛いのは分かる、精密検査の結果待ちみたいなもんだろう。

「おう、大丈夫か?」

大丈夫じゃねぇのは見て分かるがつい聞いちまった。

「まぁ、ね」

とりあえずの返事は抜け殻みてぇだ。

「今のところ進展はねぇみてぇだな」

「そうだね。…ねぇホントにバグが見つかったらアリアも回収されちゃうの?関係ないじゃん!」

「その型固有のバグだと危険性が無視できねぇから連れてかれるだろうな」

「個人でさ、アップデートとかでなんとかなんないの!?急に破棄とかさ、そんなの…」

「まだ回収が決まった訳じゃねえし勝手な推測で慌てんなよ、俺も知り合いに聞いてみたけど原因探してる段階だろ?今はとりあえず様子見るしかねぇだろ」

深いため息をついて志乃は俯く。

「ねぇ、うちの親さ、連絡もしてこないんだけど。心配とかしねぇのかな?子供と2人っきりにしてるやつがさニュースになってたらさ、帰ってくるとか、そうじゃなくても連絡くらいしない!?おかしいだろ!あいつらにとっちゃ俺もアリアもどうでも良いのかよ!機械とか人間とかもうよく分かんねぇよ!どっちが俺のこと家族だと思ってくれてんだよ!どっちを家族だと思えば良いんだよ!」

志乃はぶちまけるように言った、聞いてるのは俺だけだったけど俺に向けて言ってるようには聞こえなかった、だから返事も相槌も言えなかった。慰めてやれる言葉を俺は持ってなかった。

 

「今日はもう帰って寝るしかねぇよ、もしかしたら大したことなく収まるかもしれねぇ。俺もニュース見とくしよ、なんかあったら考えようぜ」

返事はなかった、代わりにフラフラと志乃は帰っていった。

何もなく収まればいいのにな。何もない日常を繰り返しすぎて、何か起こればいいのにと繰り返し思ってたのに、いざ起きたときは平穏が一番だとか都合のいい事を思ってんだ。

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