第2章 その6

「何だよ、ガキ」

「何だよじゃねぇよ、おっさん。前に拾ったもんあるだろうが、あれは俺のなのだから返してよ」

「何の話か分かんねぇって拾ったもんってなんだよ?あ?それに大人に向かって口の利き方がなってねぇな、今どきの学校はそんなことも教えてくれねぇのか?」

制服で口が悪いガキに知り合いはいねぇ、どうせいいところのお坊ちゃんだろうが一体何だってんだ。

「とぼけんな、あんたが俺が捨てた部品拾ってんの見てんだよ。ちゃんと家まで持って帰ってんのも見てんだよ。返せよ、捨てたけどあれは俺んだよ。」

そこまで言われて思い出した、こいつあの時きょろきょろしてたガキだ、あれを取り返しにきたのか。

「捨てたんならもういらなかったんだろ?じゃあもう俺のもんじゃねぇか、いまさら返せとか言われても」

「あれはミスっただけで、やっぱりいるから、だから」

ここでガキが何かを見つける、とっさに隣に座ってきて話す

「話合わせて」

後ろを見ると向こうから警察が近づいてきていた

「こんにちは、少しよろしいですか?こちらの子は学生さんのようですがお子様ですか?」

学校の授業が始まっているこの時間に制服でこんなところにいるこいつを怪しがって声をかけてきたみたいだ。

「あ、違うんですよ」

素早く返事をしたのはガキの方だった

「僕、学校に向かう途中で気分が悪くなって、この方が介抱してくれたんです。今、学校に連絡を入れようとしていたところで」

「そうそう、ひでぇ顔してたから大丈夫かと思ってな、だいぶマシになってきたみたいだけど」

「そうだったんですか。もう大丈夫なのかい?困っているならお巡りさんが助けてあげるよ?」

「いえ、大丈夫です。もう少し休んだら一人で動けますので。ありがとうございます」

こう本人がしっかり返事してれば食い下がるわけにもいかなかったようで「それじゃあ」と警察は離れていった。

「まだ様子伺ってると思うからこのまま話すよ、とにかくあれ返してよ、必要なんだよ」

「さっきは随分いい子ちゃんに話できてたのにまた戻ってるぞ、そんな失礼なガキの言うことをなんで俺が聞かなきゃいけねぇんだ?」

「警察に疑われてるときに突っかかるバカがいるかよ、おっさんとは違うんだよ。じゃあ何?丁寧にお願いしたら返してくれるの?」

ずいぶんお利口なガキだ、こういうのはイケすかねぇ。

「それにおじさん、立場わかってんの?おじさん泥棒なんだよ?ここで穏便に返してれば丸く収まるんだよ?」

「泥棒ねぇ、それを言うならお前はどうなんだよ、あの部品どっから引っ張ってきた?自分でやったんならバレたらやべぇやつじゃないのかよ、それが後ろめたいから警察にも話せなかったんだろ?」

痛いところ突かれたみたいな顔してやがる、図星か。

「お前が俺をバカにしてんのはよくわかった。けどお願い事があるんならその態度じゃダメだろ。それに事情があるならちゃんと話すべきじゃないのか?穏便に済ませたいならな」

「分かったよ、話せばいいんだろ。でも長くなっちゃうから学校終わったらまた来る、警察まだこっち見てるし話しこんでたらまたこっち来そうだし。逃げないでよね、家も知ってるから居なかったら今度は家に押し掛けるから」

ここにきて脅しをかけてくるとか、こいつはロクな大人にならねぇな

「わかったよ、学校は何時に終わるんだよ」

時間を伝えてガキは学校に向かうみたいだ、まったく面倒なことになってきた。

「それと、俺『ガキ』じゃねぇから、『ショウジ』だから」

「それは苗字か?名前か?どっちだ?」

「東の海の林で『東海林』名前は志すに乃木坂の乃で『志乃』」

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