第2章 その12

テレビでニュースを流してる、ずっとそれを見てる。いつ結果が出るか分からないから、今はこの問題が解決しないと他に何もする気なんて起きるはずがない。学校の他の連中は勉強やら部活やらいつもと変わらない、先生もいつも通り、だって関係ないから。他の人にはいくつものニュースの一つでしかないから、でも関係あるはずのうちの両親ですらいつも通り、関係あるはずなのに、俺だけが考えてる、俺しかいないから、他に考えてくれる奴なんていないから。

アリアは隣で黙って座ってる。俺が黙ってろって言ったからだ。俺が考え込んでると、どうしたと聞いてくる。破棄になるかもしれないなんて本人に言える訳もなく俺が考えるしかない。

「以前起こったアンドロイドの暴走事故について外部機関の調査が進み原因が確定したとのことです。メーカーからの発表によると『ネットワークを経由した外部からの悪意ある攻撃により一部のタイプのアンドロイドに強制的にウィルスをインストールさせられたことによるものだった。このウィルスは非常に危険性の高いものであり個人で解消できるものではない、メーカーとして早急に該当する個体を回収しオーバーホールを行う義務がある』としております。該当するタイプの型番は―――」

 

ついに決まってしまった。これでアリアが連れていかれるのは確定した。オーバーホールになるからもう俺のことも忘れてしまう戻ってきてもまた一から教え直しだ、俺の名前から教えないといけない。

「志乃くん」

アリアは穏やかに話しかけてきた。

「このところ考え込んでいたのはこの事だったんですね。私はてっきり学校でイジメられているとかお父さんと喧嘩してしまっているのかと思ってました。志乃くんが辛い目にあってなくてよかった。私のことなら平気です。このままオーバーホールしてもらえれば問題ありません。これまでの記憶がなくなってしまうのは悲しいですが、何より志乃くんを傷つけるかもしれないなんてことの方がよっぽど嫌です。」

そう話してアリアは、何も返事が出来ない俺を抱きしめた。

その感触は確かに温かくて機械なのか人間なのかホントに分からなくなった。

「あなたが覚えていてくれていれば大丈夫、悲しまなくて大丈夫」

 

抱きしめられたままどれくらい時間が経っていたのか分からない。

もう考えることもできなくて、もうどうすることもできないと思った。

電話が鳴ってようやく動く、父さんからだ。

「志乃、今、事件についてメーカーから連絡があってな。アリアが問題のタイプらしいんだ、回収にくるから父さんこれから向かう、とりあえず家で待ってろ。おい、聞いてるか?」

「知ってるよ、ニュース見てたから。帰ってくるんでしょ?分かったよ。」

電話を切る。今更言われなくてもいいようなことだけ言ってきやがる。

そうだ、おっさんに連絡しないと。そういえばおっさん関係ないのにいろいろ考えてくれてたかも。なんでだろ関係ないのに、他人なのに。

そう考えていたら、向こうから連絡がきた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました