第2章 その10

それから時々、俺は志乃と話をした。

なんでもない話をするのはタカミと変わらないのに志乃との話は楽しかった。頼られている気がした、ただ若人のキラキラした言葉の端々が時折刺さる時があった。それは正直キツかったけど、そこ以外はいい暇つぶしになってた。

 

ある朝、電話でたたき起こされる、電話が鳴ったのなんかいつ振りだ?

誰か分からんがそのまま出てみる。

「おじさん、ヤバイかもしれない、ヤバイ事になるかもしれない」

随分焦った声が耳に飛び込んできた、とにかく状況がさっぱりだ。

「ヤバイって何がだよ、また何かやらかしたか?」

「俺は何もしてないけど、事故があったらしくてさ…」

アンドロイドの暴走事故らしい。

突然反応がおかしくなり、所有者の声にも反応しない。急にどこかに向かって暴走して部品の限界値以上のスピードを出して半壊した後に止まったらしい。暴走中は歩道も車道も関係なく走り回って所々で被害が出たようだ、今のところはウイルス性のバグなんじゃないかって見解らしい。

「で、その事故を起こしたのがうちのアリアと同じタイプなんだ。もし回収騒ぎになったらオーバーホールか最悪廃棄処分になっちゃうよ!」

 

電話の後、とにかく朝じゃまともに話もできねぇから学校に行けと言い、俺の方でも状況を確認しようと思った、ニュースの記事を見ると確かにそんなことがあったようでアンドロイドの型番も載ってた。

何か詳しい話を知ってるかもしれないとアンドロイドショップの爺さんのところに向かう。

 

「やぁ探偵さん、この間のは解決したのかい?」

「あぁ、おかげさまで。今回はまた別の話なんだけど、今朝のアンドロイドのニュース知ってるか?」

「ん?暴走事故の件かい?珍しいよね、近頃はアンドロイド関係の事故なんてあんまり聞かなかったのに」

「あれは何が原因なんだろうな、やっぱりウイルスなのかね?」

「どっかから感染したのかもしれないね、もしくは自分で余計な手を加えてしまったとかね」

「同じ型のもんが回収とかになったりするのかね?」

「まだそんな話にはなってないけど、特定の型のモデルの不具合だったとしたらメーカーは回収して対応するのが義務だからね」

別段新しいことは聞けなかった。

「何か詳しい事が分かったりしたら連絡くれないか?」

俺は連絡先を教えておいた。

「いやぁ、ずいぶん探偵っぽいことしてるねぇ」

爺さんはどこか見透かしたような言い方をしているように聞こえた。

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