藤原 雄二

シザーハンド

ハサミの腕で それでも抱きしめる 傷つける事を承知で 尖った部分が食い込む 離してしまえば奈落に落ち...

イヤホン

両の耳にイヤホンを詰め込む 公共の場から逃げるために 耳障りな雑音を遮って 必要な音楽を流す そうし...

インスタント

お手軽な幸福は持続せず 喉元を過ぎればもう忘れて 胃に溜まっても満腹感がやってこない すぐに手に入る...

時を越えて

その一瞬の輝きを閉じ込めたくて 歌にした絵にしたシャッターを切った 技術は進歩して何度でも その瞬間...

門出

節目の君へ贈る手向けの言葉 憂う未来を晴らすような 強い言葉を贈れたら 私が今まで使った言葉 指針に...

君の夢を見た

君の夢を見た 何の前触れもなく 夢に出てくる人は 相手がこちらを考えて くれているからだと そんなわ...

メッセージボトル

この広すぎる海へ どこに届くかも分からないまま 言葉を詰めて 言葉しか伝わらないから ここにいるよと...

深夜

午前三時の静寂 しんとした漆黒の空に 点いて変わる信号機 遠くの方のタイヤの転がる音 短く響く足音 ...

趣味

歌いたくなる時 絵を描きたくなる時 どこかに行きたくなる時 どこにも行きたくない時 本を読みたくなる...

空を見上げて歩く せめて視線だけでも上向きに 電線に止まる鳥たちや 雲の切れ間の日光 くすんだ看板 ...