第2章 その2

街の中にはアンドロイドが溢れてる。

労働用のアンドロイドは肌とか髪とかの質感が微妙だからなんとなく見分けがつくというか違和感を覚えるから分かるけど、コミュニケーションを目的にしてる個人用の個体はその辺の細部までこだわってるからぱっと見じゃ分からねぇ。だから見えている以上にアンドロイドは多い。

今時じゃアンドロイドはちょっと仕事を頑張れば持てるくらいに普及して家族同然に考える奴も多い。

街中もそうして寂しく独りで歩く必要もなくなった、そんなに寂しいならアンドロイドと歩きゃ良いし

それが嫌な奴は寂しさなんざ纏ったりしない、つまり街中を一人寂しく歩いてる奴は寂しさを紛らわすほどの金もない貧乏人ってわけだ。

 

こういつもブラブラしてるとだんだん決まったコースみたいのがいくつかできてくる。

家を基準に北に行くか南に行くか、その途中には公園があるなとかなんちゃらの店があるなとか。その日の気分で歩き始めてなんとなく決まった場所で休憩したりする。

ある程度のルーティンってのは他人にもあるもんでその内顔を覚えるくらいにはよく見かける奴が増えてくる、二人仲良く手繋いで歩く老夫婦とか公園でいつもアンドロイドのカタログを見てる奴とかスペース作って歌ってる女の子とか。

 

たまに人と話すことがある、俺自身は人と話すのは苦手だし自分から話しかけることはないが、似た境遇というか同じように暇を持て余してる奴が何度か顔を見たからか声をかけて来たりすることがある。

「今日は何してんだ?」

いつも同じジャージを着て軽薄な笑みを浮かべながら話す、こいつはタカミと言うらしく一応仕事をしているらしい。ただあまり人に言えない仕事らしく詳しい事は話せないなどと聞いてもいないのにペラペラと話した。一度話してからは見かけるたびに声をかけてくるようになったが、結構な頻度で話しかけてくる気がするから本当に仕事をしてるのか怪しいもんだ。だいたい聞いてもいない話をする奴は自分をよく見せるのに嘘を平気で言ったりする。

「いつもと同じだ、空見て人みて時間を潰す」

「無気力なもんだな、何かないのかよ、したい事とか」

「しようにも金がねぇ。できることと言えば気が滅入るからぶらつくくらいだ。」

「相も変わらずだねぇ」

自分の気が済むまで話して気が済んだら「じゃ」っと言ってどこかへ行く、それを見送って俺もまたぶらつき始める。

 

妙にきょろきょろしながら路地に入っていくガキが目に付いて、入っていった路地の方を遠目から眺めてたら、なにやら物を捨てて行ったみたいだ。足早に離れていくのを見届けた後に拾ってみた。

何かの基盤、何かの部品、それ以上のことは何も分からなかった。

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