子供のころ見た覚えのある いつまでも追いかけてくる月 車の窓からいつもより速い速度で動く僕を 何度曲がっても変わらずに 同じ面を向けている トンネルやビル、家やお店で 遮られたとしてもまた顔を出す 気が付いたころには追いかけなくなったころ 毎日の違和感に体が重くて味がしない ビルに囲まれて大勢の人と同じ向きを 見ているはずなのにどうにも 見えているものが違うみたいだ 自分で運転する車には酔わない どう動くかがわかっているからだ 僕はよく車酔いする子供だった 毎日の中で吐き気を催すのは 誰かに日常を振り回されているからか 耐えきれなくなって立ち止まる 逃げるように踵を返した 違うところに行きたかった ここじゃないどこかというよりはやっぱり 行きたい場所があるみたいだ 思い出したのは一度迷った道 あの先に通じる道はあるのだろうか どうせならもう一度行ってみようと歩き出す 二度目の道は新鮮さが薄まるから 昔よりも早く着いた気がした 改めて目の当たりにすると こんなに小さかったっけと懐かしさを感じる それほどまでに時間が過ぎたんだ 昔つけた傷と僕の中にある傷を 答え合わせをするようにたどっていく 視界の隅にそこには居ない影を見る 追いかけるようについていく もしくは導かれるように 結局、心が躍る場所は多くはない 自分に嘘をついてみても誰も救えない 回り道の果てに追いかけるように あのどこまでもいけた気がした頃を 追いかけるように
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