第2章 その7

「おーい、志乃ー、なーにサボってたんだよー」

「サボってない!途中で気分悪くなっただけだって!」

「なんだよー、そんなん嘘だろー」

笹原拓磨がうざったく絡んでくる、今朝1時間目の終わりごろに登校してきたことに対して絡んでくる。

確かに今朝の体調が悪くなったってのは嘘でホントは見知らぬおじさんに話しかけていたなんて言えるわけがない。

ホントは俺だっておじさんなんかに話しかけたくないし、体調が悪いのは嘘じゃなかった。

悪くなったんじゃなくて、すでに悪かった。このところ寝れてなくて頭がぼーっとする。

「なんか寝れないんだよ、最近」

「おいおいー、夜な夜な起きて何見てんだよー」

くだらない返しが返ってくる。

「そんなんじゃねー、考え事だよ」

なんであんな事したんだろう、

なんでわざわざよく分かんない部品なんか持っていくんだろう

なんですぐ返してくれないんだろう

考えはまたグルグル回り続けて気がついたら放課後になってた、今日の授業は何にも覚えてない、さっさと解決しないと。

 

「やっと来たか、ガキ」

「東海林って名乗ったでしょ、もう忘れたの?こんな短い時間も覚えてられないの?」

「うっせぇ、お前なんかガキで十分だ。で?話があるならさっさとしろ」

「はいはい、俺も暇じゃないからね。まずはあれだよ、あの部品は俺のアンドロイドのやつなの。世話用のやつで子供ん時からずっといるけど、最近鬱陶しくて止めちまおうと思ったの。で、あの時は捨てたんじゃなくて、ちょっと置いてただけなの。知らないおじさんが持っていくなんて思わなかったの、だから返して、あれがないとうちのが動かないの」

「はーん、あれはコアみたいなもんか。でもよくもまぁ取り出せたもんだよな、お前がやったのかよ」

「そうだよ、ちょっと調べたらできたんだよ」

「普通のやつはできないらしいけどな、分解したのがバレると捕まるらしいな」

「だから今もヤバいの、親は今は家に居ないからバレてないけどたまに様子見にくるからバレたら面倒くさいの」

「子供とアンドロイドだけ放ったらかしか、金持ちはやることが違うな」

「うちは金持ちじゃないよ、普通だよ」

「あのな?このご時世、結婚できるだけで十分優等生だし、お前も良い学校通ってんだろ?その上アンドロイドと子供用の部屋?ふざけんな、そんなのが普通なら俺は底辺もど底辺じゃねぇか」

「おじさんは何してる人なの?」

「なんもしてねぇよ、無職だよ」

無職のおじさんと話すなんて初めてだ、こんな人ホントにいるんだ。

「そんな哀れな俺からお前はちっぽけな部品を奪おうってのか?」

「そりゃおじさんは可哀想かもしれないけど…」

「可哀想とか言うな!」

「自分で言ったんじゃん!とにかく俺にとって大事なもんなの!おじさんには要らないもんでしょ!」

「高く売れるんだと」

「そんなの犯罪じゃん!」

「大人の中じゃ犯罪犯さないと金を稼げねぇ可哀想なやつがいるんだよ。まぁ残念だけど諦めろ、今はもう持ってねぇんだよ」

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