「謝らなくていいよ、僕らは今日初めて話したんだから知らなくて当然だ。それで…その…前の事は、聞いても良いのかな?」
「陽君は優しい人ですね。前のご主人様なら私に気を使うこともしないし、ましてや、おしゃべりすることもほとんどありませんでしたから…」
初めからお話をしない人ではなかったんです、たしかに口数は多くはありませんでしたがとても優しいお父さんでした。その方には息子さんがいました、ノブヒロくんと言います。私はノブヒロくんのお世話係も兼ねていました。ノブヒロくんと遊ぶことで私は色んなことを学びました。
ですがある日を境にノブヒロくんとそして奥さんがいなくなってしまったんです。当然、私は聞きましたが答えはありませんでした。そしてそこから質問や会話などは禁止になりました、ひどく悲しそうな表情で怒鳴るご主人様を見て私は従わないわけにはいきませんでした。そこからは淡々とご主人様の身の回りのお世話をして過ごす日々でした、外についていくことも禁止されていたので本当にお部屋の中での毎日でした。そしてある日ご主人様は一言「すまない」とあやまった後私をシャットダウンしたのです。それがご主人様とのお別れで、私の最後の記憶です。
「ノブヒロくんがどこに行ってしまったのかは分かりません。ご主人様がなぜあやまったのかも分かりません、私は何か間違ってしまったのでしょうか」
適切な方法でシャットダウンをしないとアンドロイドに不具合が出る、前のデータが残ったままなのもそのせいだろう。
「気持ちは話さないと伝わらない、それは人間もアンドロイドも変わらない。『話す』ってコミュニケーションの取り方をしているから仕方がない。君が悪いわけではないよ。」
「ありがとうございます、やっぱり陽君は優しい。どうしてそんなにアンドロイドにまで優しくできるのですか?」
「僕にはアンドロイドだろうが人間だろうが、同じように考えて感じてそこに存在している人が別の存在だとは思えないだけだよ」
「フフ、陽君と話していると面白いです。…陽君…アンドロイドからこんなことを言うのはおかしいと思うのですが…お願い事を聞いてもらえますか?」
「もちろん僕には出来る事と出来ないことがあるけど、出来る事ならがんばるよ」
「その…お願いというのは…陽君が眠るときに暗くなる時にそばにいていいですか?」
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