第2章 その9

「こんなところで何やってんだ?青春黄昏中か?」

「おじさんを待ってたんだよ」

部品を渡せばそれっきりかと思ってたらまたその時の場所にあいつは居た。

去り際にいつもいるのかと聞かれたからまた来るのかと思ってはいたが、まさか次の日にもいるとは思わなかった。

「待ってたってなんかまだ用があるのかよ」

「別にあるわけじゃないけど、話がしたいと思って」

「こんなおっさんにか?」

「そんな無職なおじさんだからだよ」

年を取れば取る程、ガキの考えはわからん。無職だから?なんだその理由は。

「今までおじさんみたいな人と話した事なかったから。友達はみんなバカだし、先生と話したいなんて思わないし、親は近くに居ないし話せることなんてないし」

「それでたまたま知り合った無職のおっさんか」

「この間、俺のこと反抗期って言ったろ?しかもアンドロイドに。そんな事ってあるの?アンドロイドだよ?人間と違うんだよ?」

「でもお前中学生だろ?その時期になりゃ反抗期にもなるし、お前の場合近くに居るのが親じゃなくてお世話用のアンドロイドだったら普通の反抗期の矛先がアンドロイドに向いてもなんもおかしくないだろ。それくらい今は生活にアンドロイドがいる」

「おじさんもアンドロイドに反抗したことあるの?」

「うちはそんな金持ちじゃなかったからアンドロイドに世話してもらったことなんかねぇよ、大人になってからの方がアンドロイドが嫌いになったわ。あいつらのせいで仕事につけねぇんだからな」

「ちっちゃい時からアリアがいたから分かんないや、そんな人いるんだね」

「自分の環境が当たり前と思うなよ、恵まれた環境にいやがって、羨ましいわ」

「でも悩みが無いわけじゃない、こっちはこっちで大変なんだよ」

「で、アンドロイドにイライラか。ま、そんなもんだろ、いろいろとやかく言われて、いっそのこと消えてくれって思うのは健全だわ。お前の場合は行動がちとやべぇがな、人間に置き換えたら息の根止めてるからな」

「人間だったらそんなことするわけないだろ、機械だからやってみようって思っただけだし」

「それで取り出せちまったんだから天才ってやつかね、将来はアンドロイドの設計関係の仕事にでもついたらどうだ?安泰だろうよ」

「将来とかよくわかんないよ、仕事ってしなきゃいけないの?生きていけるんだから何もしなくてよくない?」

「最初はいいんだよ、でもなその内、持て余してる時間が耐えられなくなる。ほんとに『生きてるだけ』になるんだよ、心臓動かしてるだけだ、何にも楽しくねぇぞ、何したらいいかも分かんなくなってくるしな」

「ふーん、無職も大変なんだね」

「そういうこった、それぞれ大変なんだよ」

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