今日は音楽じゃないな、そういう日がある。こんな時は大体が落ち込んでいるときで、その気分が音に表れているような気がして音楽が楽しくない。このところあまりにも家に籠りすぎたのだろうか、たまには外に出ないと。
「ねぇ、エミ。どこか行きたいところはある?」
「わぁ、デートのお誘いですね!んー、そうですね、少し遠くても平気ですか?」
「まぁ日帰りの範囲なら」
「動物を見に行きましょう!」
動物園か、今までの人生で何度行ったことがあるだろう、気晴らしにはもってこいだな。
「そしたら準備をするので陽君は先に駅に向かっててください30分後に待ち合わせです。」
「わざわざ待ち合わせするの?」
「デートですから!」
適当にぶらつきながら30分後、駅で待っているとエミがやってくる。髪型も変えてきて服装もお気に入りのやつだ。お気に入りというのもどちらかというと僕の好きなやつではあるのだけれど。
「どうですか?可愛いですか?」
「もちろんバッチリ可愛いよ。」
積極的に買うことはないけれど、エミの服もずいぶん増えた。一緒に買いに行ってエミの思うように選んでもらうけど最終判断は僕がしているように思う。
久しぶりの電車に並んで座り、景色を眺めつつ動物園に向かう。技術の発展にともなって環境も大きく変わり、数多くの動物は今じゃほとんど保護対象だ。動物を見れる機会はほとんど動物園くらいしかなくなってしまった。
「ネコはとても愛らしい動きをしますね、大きいのも小さいのもみんな可愛いです」
「昔は家でも飼うことが出来たみたいだけどね。その頃が羨ましいくらいにこの子らは可愛らしいね」
「どうですか?動物の癒し効果は?」
「そうだね、和むよ。ん?もしかして僕のために動物見に行こうって言ってくれたの?」
「アニマルテラピーというやつですね。このところ陽君、暗い顔していたので」
「心配かけるね。何があるわけじゃないけど、引きずる時はつづくからなぁ」
「いいんです、心配だけはさせてください。」
何でもなく動物たちを見て日が沈むころに電車に乗り行きの頃よりも穏やかな気持ちで電車に揺られる。眠くなることのないエミが僕の肩に頭を預けて目を瞑っている。なんとなく今夜は曲を作ろうかと思った。
「ねぇ、エミ。君には夢がある?」
「夢ですか?なんでしょう、今がとても楽しいのでこれ以上を望むことはあんまりないですけど。しいて言うならこのまま陽君と一緒にいるのが夢です。」
「そっか。」
いつも通りに過ごせなくて、少しだけ特別なことをして、いつもの部屋に帰ったらいつもみたいに戻ってた。ご飯を食べて、ゆっくりギターを鳴らしながら曲が形になった。
「エミ、曲が出来たよ」
「どんな曲ですか?」
「タイトルは『夢をみるひと』」
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