第2章 その8

あのおっさんは人が悪い。

人の弱みに付け込むタイプだ。

「ほらよ、待たせたな」

ケースに入った部品を差し出してくる。

「持ってないって言った時は最悪だって思ったよ。」

あれは結局、調べるために預けていたから手元にないって意味だった。でも確実に勘違いさせるようにああいう言い方をしたに違いない。

「別に嘘はいってねぇからなぁ」

ほらニヤニヤしてる。

「しっかし、今どきの中学生はアンドロイドに反抗期を起こすんだな」

「はぁ!?」

突然こいつは何を言い出すんだ。

「反抗期って何だよ、そんなガキみたいなことするわけないだろ。今回のは、なんか試しに取れるかとかやってみただけで、そしたらおっさんが面倒くさいことしてくれただけで反抗期とか関係ないし!」

「ガキがガキみたいなことしてなに恥ずかしがってんだよ。ガキはな、ガキって言われれば怒るんだよ、大人になりた~いって思ってるガキはな」

「じゃあ、おっさんはおっさんって呼ばれて怒るわけ?」

「おっさんを受け入れられてないおっさんはな、怒るんじゃねぇかな」

「なに、カッコつけてんの」

急に大人みたいな風になってムカついた。

「まぁ、ガキは立派な大人になれるんだろうからあんまり危ない事に手だすなよ」

受け取った部品に意識がいく。軽率に動いた結果の塊がここにあるせいで物凄く恥ずかしくなってきた。

「もう行くよ、さっさとこれ戻してくる」

「おう、じゃあな」

離れる前にもう一言声をかける

「おっさんはさ、いつもここにいんの?」

「いるときゃいるし、いない時はいねぇ」

てきとーに笑いながらおっさんは言う

 

物は分解するより組み立てる方が大変。気が付けば随分時間が経っててお腹も空いている。

かなり面倒くさかった、なんでこんなことしたんだろう、時間を無駄にした気がする。

人間が目を覚ますように、アンドロイドのアリアは目を開ける。

「志乃くん、おはようございます。私は眠っていたのですか?今はもう夜のようです、なにが起こったのでしょう」

不思議そうな顔で問いかけてくる。人間となにが違うのか分からない。ずっと一緒にいるのに最近になってそれが気持ち悪い。アンドロイドって何なんだ。

「さあね、不具合なんじゃないの?別に困らなかったし」

言い訳なんて思いつかなかった、いつものように適当に返事をしてごまかす。

「腹減ったから、ご飯にして」

「かしこまりました」

アリアは笑顔になってキッチンへ向かう、その前の悲しげな暗い顔は見なかったことにする。

とにかくこれで問題は解決した、もうゆっくり寝れるだろう。

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