物語の中へ

小説というのは物理的には
紙にインクが張り付いているだけだ

それを我々は文字として認識をして
その連続性に物語りを見出す

伝記や歴史書などと違い
フィクションは基本的に
ある一個人の妄想の産物である

頭の中の景色を人物を動かし世界を創る

その紙の束に閉じ込められた世界を
読む事で読んだ人間の頭の中に
その世界は構築される
あくまで読み手によって

存在しもしない人物を想像し
人間性を見出し
時に共感し感動する

それぞれがそれぞれの頭の中で
紙へ写し紙から受け取る

物語りはその本を閉じれば世界は閉ざされ
開けばまた世界が広がる

紙が日に焼けようと
インクが見える限り物語りは変わらない
何十年と時を越えようと