少女は大人に憧れた 素敵な衣装を身に纏い 煌めく優雅なその姿に 今はまだ出来ない自身に 苛立ちを込めて 早くそこに行きたいと 焦りに似た歩み 男は隣人に憧れた 自身より立派な家を持ち 家庭、車、身に付けるもの 全てが劣っているように感じた もっともっと、と渇きのように 塩水を飲むように 凡人は天才に憧れた 尊敬し羨望を向け褒め称えた 自身にないものを 全て持ち合わせている気がした いや、思い込んだ 私には何もない 苛立ちのような黒く這いずるものが 自身の影を形作った 視線の先の彼らも同じ 苦しみに悶えもがき 同じように誰かを見つめる 別の先かもしれない 向い合わせかもしれない 憧れは自身以外に向けるもの 自分自身は見れないように 自身の目に写るものだけ 頭の中で再生される 過去と未来もまた然り
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